大学院生の研究紹介

中村大介(博士課程)
1800年前後のロマン派の文学を対象に、同時代の社会的背景や文学以外の領域の言説を補助線にして分析しています。作品の新鮮な解釈を提示することはもちろんのこと、補助線となりそうな文献を漁りながら、誰も読んでいなさそうな一次文献をいかに面白い資料として紹介するかを考えるのもやりがいのある仕事です。
三田にある独文の共同研究室では、学生だけで読書会や勉強会を開いて、研究の意見交換をすることもできます。大学院に入ると学生同士でする作業もありますので、研究仲間は作りやすい環境だと思います。
寒河江陽(博士課程)
20世紀ドイツのユダヤ人思想家ヴァルター・ベンヤミンの思想を分析しています。とりわけ教育思想家グスタフ・ヴィネケン、社会学者ゲオルク・ジンメル、婦人解放運動の指導者マリアンネ・ヴェーバーらの思想と比較することを旨としています。目下、ベンヤミンの師匠であったリッケルト、ジンメル、そして好敵手であったハイデッガーの弁証法論理学、歴史哲学とどのように異なる思想をベンヤミンが展開していたのかに興味を持っています。
有家真奈(博士課程)
20世紀初頭の抒情詩人、作家であるライナー・マリア・リルケの詩における天使の描かれ方に着目し、伝達をめぐる問いがどのように主題化されているか研究しています。これまで詩人や人間の実存についてうたわれていると理解されてきた『ドゥイノ悲歌』を、メディア論の文脈から読み直しています。
柴田晴大(博士課程)
目下の関心はドイツ・ヨーロッパの音楽劇で、その中でもとりわけ18世紀に誕生したメロドラマにあります。メロドラマという用語は現在、演劇だけでなく、映画やテレビなどの幅広い領域で用いられる多義的な意味を含んでいますが、このジャンルの特徴についてはあまり知られていません。通俗的と思えるメロドラマのモチーフを出発点にして、通俗性という意味合い以外はほとんど知られていないこのジャンルとモチーフの実態を文化史的に明らかにしていくことが現在の主となる研究テーマです。
長濱俊太郎(修士課程)
学部生の頃から抱いていた「ドイツ語圏の現代文学のうち、第三世代作家は戦争の記憶にどのように取り組んでいるのか」という興味から、現在は文化学的記憶論とメディア論を手がかりに、文学における過去の想起のあり方を研究しています。修士論文ではMarcel Beyer (1965-)の長編小説Spioneを分析しています。
福田安紀(修士課程)
ナチスに関わりのある演劇について興味があり、戦間期、主に野外劇場で上演されていた、ティングシュピール(Thingspiel)という演劇形式について研究をしています。卒業論文でも邦語文献を中心に研究をしていましたが、修士論文ではドイツ語の文献も読み込んで、更に研究を進めていこうと考えています。
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